[stage] 長編小説・書き物系

eine Erinnerung aus fernen Tagen 〜遠き日の記憶〜

悲劇の少女―第6幕― 第253話

「―――マーシャ様・・。」
「・・・だれ?」
「代々受け継がれた聖杖を通じ、あなたの守護神として、行動を見守る者・・・。」
「・・・ル・・・・アート・・・?」
「―――我の名は、クロリス=コロナ・・・。―――聖杖を生み出した者・・・。」
「クロリス=コロナ・・・。あなたが、最初の・・・、悲劇の少女―――。」
「幾千の悲劇の果てに、数多の少女が力尽きました・・・。
 ・・・この忌まわしき運命の鎖を―――「悲劇」を断ち切る力を・・・
 永遠とも思えるこの乱れし時の氾濫の中で待ち続けた・・・・。」

「―――だが、それも・・・・叶わぬ夢と成り果てるのかもしれません・・・・。
 悲劇の少女―――秩序に縛り付けんとする光と、混沌へと向かわせんとする闇との
 間に存在する、生に仇をなし、世に邪を蔓らせ、やがて自らを滅する・・・。
 ―――汝は、その身を滅ぼし、汝は、その世に「悲劇」をもたらす―――
 ・・・いずれの時にか、あなたの中で、その力は完全に目覚め、
 あなたが、滅する時が訪れるでしょう。―――その時・・・。」

「・・・その時―――」     
「あなたと共に歩く者にすべてを託し、新たなる悲劇の少女を
 この世へいざなう果てしなき旅へと旅立ちなさい・・・。
 ―――数多の悲劇の少女が・・・・そうしたように・・・。」


「いいえ。」
「・・・何を・・・・?」
「まだ私は、・・・みんなと一緒に歩きたい。
 私が悲劇の少女なら、・・・最期まで悲劇の少女としてみんなと・・・。」

「いずれあなたと共に歩くものは引き裂かれるのが運命。
 その時、共に歩く者を仇なす事もありうる。・・・それでも構わないというの?」

「・・・。」

「・・今は悩みなさい。・・・「悲劇の少女」に課せられた使命は、
 私でさえ計り知れないほど重いのです。―――あなたの決意はわかりました。
あなたに、すべての行方を賭けてみましょう・・・。
 ・・・あなたのその目で見るのです、あなたの行く道を。・・・マーシャ!!」




 ―――私は、ベッドの上にいました。それは、見たことのないところでした。
 ふと、窓の外を覗きました。辺りは白い霧と闇で何も見えませんでした。
「・・・起きたのか。」
 私はその声の方向へと目を向けました。それは、セニフさんの声でした。
「・・・突然マーシャの声がしたものだから、驚いた。
 ・・・何か、辛い夢でも見ていたのか?」

「わ、私、・・・な、何か・・・喋って・・。」

「―――変わってないな。」
 セニフさんは、私の顔を覗き込みながら話されました。
「・・・え?」
「今度、マーシャが目を覚ました時、・・・もう私のこと・・・、
 シーナやアーシェル達も覚えてないのではないかと、思っていた。」

「みなさんは?・・・そ、それに・・・ここは?」
「・・・エリースタシア―――ミスト・・・ホープ・・・・。」



 まだ、自分の意識がはっきりとしていないマーシャを、私は連れ出した。
セリュークの話というものが確かならば、この地に必ずいるはず・・・。
「・・・どこに行かれるのですか?」
「―――マーシャには、話しておかなければならない事。
 ・・・1つは昔話、もう1つは、これからの先の話だ・・・。」

「昔話・・・ですか?」
「1つの戦乱―――、それに関わった者達の話だ・・・。」

 しばらくして、その人物の家は見つかった。扉をノックし、中へと入った。
部屋はいかにも魔術士らしい、妖しげな置物や装飾で飾られていた・・・。
「・・・まるで、セリューク様のお部屋のようですね。」
「ああ、ここには、1人の魔術士が棲んでいると聞いている・・・。」
 妙に薄暗い部屋の中へと私達は進んだ。その部屋は、これまでの部屋と違い、
ごたごたとした荷物は何もなく、巨大な魔法陣の中心に机と椅子だけがおいてあった。
「―――お主達が、この地に訪れるという迷える者たち・・・。」
「ど、どなたですか?」
 セリュークとは違う、不思議な雰囲気を醸し出す女性だった。
「あなたが、幻界魔術士―――テルト・・・?」
「いかにも・・・。」



「大魔導師、セリュークからもお主たちのことは聞かされておったし、
 ・・・ほら、お主たちの目の前にあるこの水晶にも、幻界の住人から、
 お主達のような、迷える者が来るというお告げもあった・・・。」

 その人は、私の顔をまじまじと見ていました。
「―――クロリス=コロナ・・・。お主のことか・・。」
「わ、私は、マーシャ=ルカ=エディナと言います・・・。」
「よいよい・・。水晶を見ておれば、そんなことは、訊かずともいずれ分かる事・・。」
「あなたにお願いがあって参りました。―――幻界の住人たちの
 声を聞くことの出来る、あなたの力を頼るために・・・。」

「―――よかろう。ただし、知っておるだろうが、まずは、この水晶を通し、
 お主らのことを、幻界の者に問う必要がある・・・。この水晶に映し出されることを、
 全て、偽りなく受け入れる覚悟は、出来ておるだろうな?」

「ああ・・・。」
「は、はい。」
 わけも分からず、セニフさんに合わせてそう答えました。

「―――されば、心を開かれん・・・。」

 その瞬間に、私の目の前の光景が、少しずつ揺らいでいきました。
ゆっくりとそれは崩れていき、やがて、真っ暗な世界へと私は落ちていきました。



 1人の女の人・・・とても綺麗な人がそこにはいました。
「決して許されぬ所業をした・・・。だが、今ここに居る以上は、
 ・・・私達の言葉に従ってもらう。どんな人間であろうともだ・・・。」

「―――ああ。」
 その周りには、3人の人が居ました。顔の見えた2人は、どこかで、
見た事のある・・・、けれども、知っているものよりも、とても若い頃の姿が
そこにはありました・・・。
「話をまとめるならば、―――仲間からはぐれた・・・、いや、追放されたと
 言うべきか。・・・この醜い争いから、国を守る為に・・。」

 その女の人は、決して何も話そうとはしませんでした。表情には、
怒りも悲しみも、何も浮かべることなく、ただこころもなくそこに座るだけでした。
「もしも、あなたの言うように、この女性の国が―――、舞台となるのならば・・・」
 そう言われた残りの2人の人は、別々のことを言いました。

「許されるのならば、即座に止めてやる・・・。だが、それを許しはしないだろう?」
「膨大な魔力の持ち主に頼るしかあるまい―――。」

2009/09/09 edited (2008/08/08 written) by yukki-ts next to