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  悲劇の少女―第4幕― 〜第190話〜

 (97日目朝)
「・・・おい、みんな?・・起きてくれ!!」
 俺は、シーナの体を揺すった。その時、少し離れた場所から、何かの光を感じた。
「こ、これは・・・、いったい?」
 それは、光に包み込まれた、1人の女性の姿だった。
「・・君は、・・誰なんだ・・?」

「―――ジュ・・、ネイル・・?」

 俺の背後で、信じられないものでも見ているかのような顔つきのザヌレコフが
その女性に少しずつ近づいていった。
「う、うそじゃねぇ・・・だろ?」
 その女性は、まだ、周りの様子を見回して、少し戸惑っている様子だった。
ザヌレコフの奴は、疑う気も何もなしに、両手で彼女を抱きかかえた。
「ジュネイル・・・なんだろう?」
「お・・にい・・・ちゃん?」
「―――ジュネイル!!」
 そんなやり取りを見ている時に、後ろから、誰かが俺の服をひっぱった。



「な、なんだ?」
 シーナさんは、たまにザヌレコフさんの方をちらちら見ながら、小声で、
アーシェルさんに話しかけました。
「・・・ねぇ、あれ、・・・何?」
「何って・・・。」
「―――ディッシュ、あんたどう思う?・・私達、いつまで見てる気なの?」
 ほとんど無理矢理起こされたディッシェムさんは、うっとうしそうに答えました。
「・・・仲間じゃねぇんだ、ここでお別れだろ?ほっときゃいいじゃねぇか。」
「い、いいのですか?」
「感動の再会って奴だろ?興味ねぇよ、あぁいうの苦手だしよ・・・。」
「あんた、人間としての心ってものがないのね。」
「あぁ?なんか言ったか?小声だと聞こえねぇんだよ。」
「だいたい、ちょっと、病的よ、あれ。まさか、あの面で、・・・シスコン?」
「―――雑談が過ぎるな・・・、もう、ここに用はない。立ち去ろう。」
「それがいいな。」
 セニフさんもアーシェルさんも、立ち上がって外へ行こうとされました。
「ちょ、ちょっと待ってください。」
「なんだよ、マーシャ?ほっとけばいいだろ、あんな野郎・・・。その方が、
 あいつのためって奴なんじゃねぇのか?」

「いえ、その・・、あの、・・・シスコンって―――」
「あぁ!!はい、もう、そこまで!あんたは知らなくてもいいの!!」



 俺達は、ザヌレコフの野郎を置いて、神殿の出口まで歩いていった。
体中疲れちまってたが、気持ちはなんか晴れ晴れしてやがった。
 俺達は廊下の途中で立ち止まった。
「お、おい、・・・あれは?」
「―――まるで、さっきの光と・・・同じ・・・。」

 その娘は、俺達の目の前に、光に包まれながら、舞い降りてきた。
俺は、ただ、その様子をぼうっとしながら見てた・・・。

「―――悲劇の少女と、・・導かれし仲間達・・・。」

「・・・あ、あなたは・・・?」
 マーシャは、俺の横を通って、その娘の前まで出て行きやがった。
その娘は、近づいてきたマーシャを見て、小さくてか細い声で、たずねた。
「・・・マーシャ・・さん、・・・ですね・・・。」
「え、・・は、・・・はい・・。」
 俺は、いてもたってもいれなくなって、その娘に声をかけた。
「な、名前・・・何て言うんだ・・?」
「・・・ドルカ―――。」
「ドルカちゃん・・か。」
「マーシャさんは、・・・悲劇の少女―――ですね?」
 その娘には、今んとこマーシャしか見えてねぇみたいだった。
「・・。」
「・・・マーシャ?」
「え、そ、・・そう・・よ。」
「今まで、・・どこにいたんだよ?」
 その娘の声が、今までよりも、ずっとか細くなっちまった。
「暗い、何もないところ・・・、何も見えなくて、・・聞こえない―――」
 そん時だった。ドルカちゃんが、目を閉じて、少しずつ体がかたむいてった。
「お、おい、あぶねぇ!!」



 ディッシェムが、とっさにその女の子の体を支えてた。
「・・ま、マーシャよ、・・すげぇ、冷てぇ。―――こいつは、まずいぜ。」
 マーシャは、まるでその声が聞こえないみたいに、ぼうっとしてた。
「おい?!マーシャ!!」
「え、は、はい!!・・でも、・・・どうして、私達のことを・・。」
「どうだっていいだろ?!早くしなけりゃ、ドルカちゃんが死んじまう?!」
「・・・ケ、・・ケミュ―――」
「どうしたんだ?!何が言いたいんだよ?!」
「―――ケミュナルス大陸へ・・・、私を、・・・連れて―――。」
「ケミュナルス大陸・・・。」

「その子、ずっと、そこに行きたがってたわ。」

 私達は、その女の声に振り返った。



「えっ?」
 それは、ザヌレコフと、ジュネイルという名の女性の姿だった。
「私達は、10年も前から、ここに封印されていたわ。」
「封印?」
「そうよ・・。あの時から、私達はずっと、たった2人だった。
 何もない、闇の中で、たった2人で、今まで生きていたのよ・・・。」

「ジュネイル・・、いったい、なんで、こんな所に?」
「お兄ちゃん・・。―――私、・・家に、帰りたい。みんなに、早く、逢いたい・・・。」

 もし、その女の子が、・・・ザヌレコフの妹だって言うなら―――。
私は、ザヌレコフの奴が呆然としてみてたあの集落の風景を思い出してた。
「この10年で、・・・とうちゃんもかあちゃんも、・・・みんないなくなっちまった。
 もう、みんな、変わっちまったんだ・・・。」

 ザヌレコフの一言で、その女の子は言葉をなくしたみたいだった。
「―――家に、帰ろう・・一緒に。」
「い、家って、・・あ、あんた――― 」
「世界を回って、俺は分かったんだ。―――過去を引きずったって、仕方がない。
 これから、生きてくことを、・・・どんなに残酷なことだろうと、
 考えてくしか、・・・ねぇんだよ。」

「・・・。」

「お、おい?!誰か聞いてんのか?!―――この娘はどうすんだよ?!!」

 '06/02/17 edited('05/10/02 written) by yukki-ts To Be Continued. next to


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