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  悲劇の少女―第4幕― 〜第129話〜

 (69日目深夜)
 10日前からの雨は、まだ止む気配がなかった・・・。
町の人々の興奮もようやく冷め、長き支配から逃れた人々は、
それぞれがまた、平和な日常へと戻っていた・・・。

 だが、宿屋に泊まっていた、旅人達は未だ、動こうとはしなかった・・。
その青年は、夜の闇の中、雨の音を聞きながら、天井を見てベッドに入っていた。

 この1週間、眠ることが出来ずにいた・・・。
あまりに一度に出来事が起こりすぎて、まだ、整理がついていなかった・・・。

 ・・・しかし、その青年にも睡魔が襲いかかってきた・・・。
青年は、眠気に負け、静かに目を閉じ、同時に急速に意識が遠のいていった・・・。



 (70日目早朝)
 薄い意識の中、青年は足音に気付き、ゆっくりと起きあがった。
うっすらと、回りが明るくなり始めてはいたが、
まだ、他には誰も、起きている様子はなかった。
 青年は、足音の方向へ歩いていった・・。
足音は、ベランダへと出ていったようだった・・・。

 まだ、薄着1枚では、肌寒かったが、そのお陰で眠気は消えた・・・。
青年は、辺りを見渡していた。まだ、雨は勢いを衰える様子はなかった・・・。

「・・・マーシャ・・。そこにいたのか・・・。」
「あ・・、アーシェルさん・・。」

 アーシェルと呼ばれた青年は、マーシャと呼ばれた少女の元へ近寄り、座り込んだ。

「どうしたんだ?・・・こんなに早く。」
「ごめんなさい。・・誰も起こさないようにして出てきたつもりだったんですけど。」
「・・・別にいい。・・・ここ10日間寝てなかったから・・。」

 2人は外を眺めていた・・。

「・・・・雨、・・・やまないな・・。」
「ええ・・・。」
 マーシャは、心なしか、沈んだように見えた。気まずい雰囲気が流れていた・・・。



「アーシェルさん・・・。」
「何だ・・?」

「・・・私、もう、この生活を壊したくない・・・。
 ―――もう、旅を続けたくないんです・・・。」


「・・・。」
 俺は答えるのに困った。その気持ちは、俺も全く同じだった。
ベッドで横になりながら、人々が、雨の降りしきる中、
踊り騒いで、喜び合っているのを、夜通し聞きつづけていると、
そのうち、この平和な日常を壊すのが怖くなってきていた・・・。

「・・・マーシャ。・・・でも、俺は、旅を終えるつもりは、・・・ないんだ。」

 俺は、空を見上げた。

「―――隊長が、最期に言い残した言葉・・・。
 『探してくれ・・・、俺の・・・。』って。・・・頭から離れないんだ。
 ・・・当ても何もないし、どんなものか、検討も付かない・・。
 ―――でも、・・・探さなきゃ、気がすまない。
 ・・・そこまでして、探したかったものが一体何なのか・・。」


 そこで、一度、俺は話を切った。

「バカだよな・・、俺、・・・こんな性格だから。
 いつも、知らなきゃ気がすまない・・って。」

「・・・でも、もし、見つからなかったら?」
「その時は、その時・・・。でも、きっと諦めないだろうな。
 ・・・根が単純な奴だからな、俺・・。」

「・・・でも、私は・・・。」

 俺は、うつむいたマーシャに向かって、話しかけた。



「・・・旅していれば・・、全然動かないより・・、絶対に楽しいと思う。
 ―――この街の人は、平和の方がいいって言うに決まっているだろうが、
 なんていうか・・、俺の性に合わないって言うのか・・。
 ・・・動いていないと、落ち着けないんだ・・。
 ―――マーシャが羨ましいよ。」

「そんな・・。私がうらやましいだなんて。・・私なんか、・・・いなくたって。」
「何言ってんだ?・・・俺達はずっと今まで、仲間だったじゃないか!!
 ・・・もちろん、これからだって・・・。」

「私がいたら、アーシェルさん達に・・・。」
「気にすんなよ。―――困らせたり、迷惑かけちまうのは、・・・お互い様だろ?」

 私は、黙っていました。でも、心に決めました。
「私・・・、やっぱり・・・、アーシェルさん達と旅を続けたい!!」
「そうか・・・。―――ん?・・もう、朝か・・・?」

 周りが、朝の陽で橙に染まっていきました。
「雨・・・、あがりましたね。」
 私は、アーシェルさんの方に振りかえって、微笑みました。
「―――そ、そうだな・・・。」

「・・・アンタ達、なに、朝からイチャイチャしてんのよ!!」



「うっ・・・、シーナ!!」
「シーナさん!!」
「・・・マーシャ、あんた10日間も寝てたのよ。分かってんの?!
 ・・・ったく、後で、宿代請求するからね・・・。
 ―――なんだか、・・・マーシャが笑うの、久しぶりに見たわ。
 ・・・雨も上がったし、・・・アーシェルも半病人じゃ、なくなったみたいだし。」

「半病人ってなんだよ?」
「・・・あのね、10日間もベッドで横になって、考え事してボーッとしてる奴、
 半病人って以外に、なんて呼べばいいのよ!!」

「・・・心配かけたな。」
「全然。」
「・・・。」
「あれ?・・・車が止まった・・。」
 この宿に、1台の車が止まるのが目にとまった。



「おい、・・・おまえら、起きてたのか・・。」
「ディッシェム!!」
 俺は、後ろを指差しながら、そこにいた3人に言った。
「・・・客だぜ。」
「お客様・・・ですか?」
「・・・めずらしい事もあるんだな。」
「で、こんな朝早くに、どういう奴なの?」
「いちいち説明させんじゃねぇよ。下りて自分で見りゃあいいだろうが!!
 ・・・女だよ。女が1人で来てんだ!!」

「女?・・・どういうことよ?誰かの知り合い?・・・アンタの?」
「下りてみればわかるだろう?・・・行くぞ。」
「はい!!」

'04/10/14 edited('04/03/02 written) by yukki-ts To Be Continued. next to


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